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■大規模シミュレーションの意義
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米国でコンピュートニクという新語を招いたほどの世界最高性能を持つ地球シミュレータが2002年に運転を開始して、計算科学の世界は大きく変身しました。従来は年オーダーの時間が掛かるため不可能だった計算が現実的な時間内にできるようになりました。地球全体の気象の変化をシミュレーション計算した結果はTVなどでよく知られていますが、それだけではなく、例えば原子間に働く力を、シュレディンガー方程式を使って第一原理から計算することが可能になり、これにより、カーボンナノチューブの特性を解明したり、アミノ酸やたんぱく質の合成や特性の解明、原子炉などの材料の研究、さらには核融合の超高温プラズマの特性解明などが、幅広い分野で進行しています。
ナノチューブはナノメートル(10億分の1メートル)程度の微小な世界であり、詳細な特性は計測もできません。しかし、計算科学を使えば微小な世界の様子も手に取るように見ることができますし、鋼鉄の強度の数十倍の力でナノチューブを引っ張ってみることも容易にできます。小さすぎたり、変化が速すぎたり、不透明だったり、温度が高すぎて、計測が不可能な現象も計算科学を使えば容易に詳細な計測データを得ることができます。毒性や爆発性があったり、強い放射線を出すために取り扱いができないような物質も、計算機の上では自由に斬新な試行をすることができるのです。なによりも周辺への影響を心配することなく、実物だったら危険な実験でも計算科学なら気兼ねなく試行できることは、何にも代えがたい利点です。多くの方式を同時に試験したり、試験装置を改良することも計算機の上では簡単にできますので、産業界とって不可欠なツールなのです。
これからは計算科学が、実物の開発を先導していく時代になるでしょう。
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■次世代気候モデルの大規模シミュレーション・ソフトウエアの研究開発
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高精度の地球変動予測のための並列ソフトウエアに関する研究(平成10〜14年度、文部科学省科学技術振興調整費)を行い、目下、この成果の一部を引き継いで、「人・自然・地球共生プロジェクト」の温暖化予測日本モデルミッションの一環として行われている地球シミュレータを使う計算を東京大学気候システム研究センター
に協力して行っています。
特に、次世代高分解能気候モデルの研究開発として、詳細な領域気象モデルを繋ぎ合わせて地球全体をカバーする新しい高分解能全球気候モデル等を開発し、温暖化、異常気象に強く影響を及ぼす赤道域の大気挙動について、地球シミュレータを使った研究を進めています。
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■ナノテクノロジーにおける大規模シミュレーションの研究開発
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地球シミュレータを利用し、ナノカーボン類のナノ材料特性把握などを目的として、力学的な特性把握のために「並列量子分子動力学ソフトウエアCRTMD/P」を、電子状態解析のために「並列密度汎関数法平面波ソフトウエアDFT-PW/R」を開発するとともに、これらにより従来知られていなかったカーボンナノチューブ、フラーレンなどの特性の一部、また新機能創製の可能性などを明らかにしています。
さらに、広範なナノテクノロジーへの応用として、ナノスケールの高温超電導体に誘起される複雑なエネルギー放射現象を解析する並列ソフトウエア「TERAPHASE」を世界に先駆けて開発し、地球シミュレータを利用した大規模シミュレーションによりテラヘルツ帯域波発振の機構解明、また産業応用へ向けた強力な光源、分析装置、大容量コネクション等の開発に関し、必要な理論、概念、設計に関する研究開発を行っています。
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■ドラッグデリバリシステム(DDS)の大規模・ソフトマテリアル・シミュレーションに関する研究
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がん治療等の遺伝子製剤を的確に患部へ運び最大の治療効果を発揮させる次世代医療法のドラッグデリバリシステム(DDS)の研究開発を、計算科学分野から支援・加速することを目的に、実験では扱い難い課題を中心に大規模シミュレーションにより研究しています。東京大学の片岡教授が世界に先駆けて開発したポリエチレングリコール(PEG)を用いた機能性高分子ミセル構造(約50nm)によるDDSを対象にしています。
大規模シミュレーションは、第一原理電子状態、量子論的分子動力学(オーダN)等の手法を用いて、大規模原子数、多原子種の条件の下で実施しますが、これらは現状では地球シミュレータでのみ可能であり、世界最大級の分子機械シミュレーションとなるでしょう。
本研究では、PEGミセル構造の発明者である東京大学の片岡教授を始め、土井教授等をメンバーとする「DDSシミュレーション研究会」を母体とし、化学、物理、医学等の異分野連携の下で、主に計算科学の専門家がシミュレーション研究を行います。
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■研究会の主催
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先端計算科学の幅広い研究者との情報交換、協力研究の活動として、「カーボンナノチューブシミュレーション研究会」、「計算ナノテクノロジー研究会」、「テラヘルツ発振超伝導素子に関する大規模シミュレーション研究会」、「DDSソフトマテリアルシミュレーション研究会」等を開催・運営しています。
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■成果の普及と発表
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1) スーパーコンピューティング会議・展示会等に毎年出展参加しています。また、国内の大学・研究機関と共同でワークショップを開催し、米国、欧州の先端計算科学技術機関との研究交流を進めています。
2) 公開ソフトウエアについては、RISTホームページ(http://www.tokyo.rist.or.jp)にダウンロードの窓口を提供するほか、必要に応じユーザー会を組織し、応用情報の交換・ソフトウエアの普及などに努めています。
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