RISTシンポジウム
「DEMの21世紀―ナノテクノロジーからコスモテクノロジーまで―」
議事録
1. 日時 平成14年 8月30日(金) 午前10時から午後17時00分迄
2. 場所 東京都千代田区神田駿河台3−11−5
中央大学駿河台記念館610号室
3. 参加者 114名(RIST11名, 公的研究機関9名,
大学37名, 企業56名, マスコミ1名)
4. 議事経緯
(1) オープニングセッション(10:00〜10:20)
RIST中村部長より開催挨拶があった。
RIST吉村理事長より主催者挨拶があった。
続いて攻玉社短期大学学長で元東京大学地震研究所所長の伯野元彦教授による開会の 辞「連続体から不連続体へ」が以下のようにあった。
計算機の発展と共にDEMが発展したが、接触関係を表現するモデルの不確かさ、膨 大な計算量、並列計算の困難さなどの壁に当たっている。しかし、ニューヨークテロに 見られるビルの破壊や、地震による各種構造物の破壊に見られるような現象を解析する にはDEM以外にあり得ないし、その他DEMには多くの魅力と可能性がある。したが って、今後、より多くのDEM関係者が集まって研究を進めてゆく必要性を強く感じる。
以下、清水建設吉田 順氏の司会・議事進行で講演が進められた。
(2) 講演−DEMの基礎理論(10:20〜12:00)
1 中央大学理工学部 田口善弘助教授「DEMでできることできないこと」
DEMを単純化することによって、粉粒体の本質をさぐりながら、DEMでできること とできないことを見極める。摩擦無しの条件で、たかだか数百個の2次元均一円形粒子 による非常に単純なDEMでも1)振動層の対流、2)振動及び流動による偏析、3) 密度偏析が見られることを示した。その結果、定性的な現象を見るためにはDEMかな り有力な手法であることを確認した反面、定量的な現象の予測には、大きなブレークス ルーが必要であると結論づけた。質疑応答はかなり活発なものとなり、密度偏析のキー パラメータ、DEMではモデル化できないこと、予言、予測に対するDEMの可能性な どが議論された。
2 東電設計株式会社 中瀬 仁博士「地盤工学における粒径の影響とDEMパラメー タに関する一考察」
粒状体の2軸圧縮、3軸圧縮、ねじりせん断試験に見られる変形のパターン形成、 歪の集中とせん断帯の形成について、各種の実験とDEMのシミュレーションによる 解析が紹介された。圧縮試験では、上下の2組のすべり面形成が見られるが、圧縮の 進行に伴い、2組のすべり面は反転を繰り返しながら、最終的に1つが選択される様 子を示した。また、これらのパターンは、非常に単純化されたアルミフレームによる モデル実験でも見られることを確認した。また、ねじりせん断試験のシミュレーショ ンで、せん断バンドの幅が粒子数に依存することから、シミュレーションに おける粒子サイズ効果は見落とせないキーポイントであることが明確になった。
(3) 講演 DEMの応用(11:25〜12:00)
同志社大学工学部 日高重助教授「電子写真画像形成システムならびに機能性材料創 製プロセス設計へのDEMの応用」
レーザープリンター、カラーコピー機など、トナーを使ったプリント技術へのDEM の応用が紹介された。講演時間の都合上、セラミックシミュレーターの紹介は割愛さ れた。磁場・電場が時々刻々変化する場における個々のトナー粒子の複雑な運動を詳 細に追跡するDEMシミュレーションによって、電子写真の制度や仕上がりについて の解析が可能であることが示された。解析では3次元で1万から6万程度の粒子を用 いることによって、磁気ブラシの形成や紙面への付着などが忠実に示された。
(4) 基調講演(13:00〜13:50)
理化学研究所情報基盤研究部部長 戎崎俊一博士「超高速専用計算機の開発とそれで探 る宇宙と分子の世界」
自らが開発した分子動力学専用のボード(MD−GRAPE)利用した超高速計算に よる分子動力学シミュレーションが紹介された。初めに、分子動力学専用ボードの設計 についての詳細説明がなされた。実際の計算では、10万粒子について75テラフロップ スの速度が達成され、実時間シミュレーションさせ可能にした。その主な応用として、 1)大規模生体分子のシミュレーション、2)非中世プラズマシミュレーション、3) 境界要素法などが示された。とくに、生体分子のシミュレーションでは、癌を誘発する タンパク質の突然変異を説明できるだけの構造転換が説明された。 会場には、デモンストレーションとしてMD−GRAPEを搭載したパソコンによる 計算実演が行われた。
また、理化学研究所の情報基盤研究部におけるその他の研究として、生体力学シミュ
レーションやスポーツ工学、人間工学シミュレーションなどの大規模計算例が紹介され
た。
(5) 講演 DEMの応用(13:50〜15:50)
1 竹中工務店技術研究所 恒川裕史博士「クラスター型並列計算環境におけるDEMの 効率的な並列化」
戎崎氏の基調講演の専用計算機やスーパーコンピュータではなく、パソコンやワーク ステーションをネットワークに接続された複数の計算機を1台の並列計算機の様に扱 うクラスター型並列化手法を適用してDEMを並列化する手法が紹介された。DEMで は、時間ステップで最も計算時間を要する接触判定や接触力計算に複雑な分岐や粒子間 依存性があり、基本的に並列化が困難であることが説明された。効率的な並列化を行う ためには,領域分割を利用した仮想境界の導入、分散化したタスク間通信、slaveでの 独立な再分割を提案し、それぞれによってどの程度の高速化が可能となるかを計算例で 示された。また、DEMでは、領域ごとの粒子数や接触点数が一定でないため、互いの プロセッサの待ち時間が多いことから、動的負荷分散の必要性があり、それについても 説明がなされた。
2 大阪大学大学院工学研究科 田中敏嗣助教授「DEMとCFDのカップリングによる 固体−流体混層流動解析」
流動層の解析を目的とした固体と液体の混層流のシミュレーションについて、DEM と差分法による流体解析とのカップリング手法が紹介された。流体と固体の相互作用と その変換などの基礎的な理論から多数の粒子を扱うための計算負荷軽減に関する詳し い説明が行われ、167000粒子を用いた2次元大規模計算や80000粒子を用いた3次元 計算のシミュレーション結果が示された。また、固体と気体の混層流についてのシミュ レーションも紹介され、リアルな脈動現象が見られることが紹介された。また、そこに 見られる脈動周波数の流動パターンの影響なども示された。 実問題へのDEM−CFDカップリングモデルの応用を踏まえた相似則モデルに関 する考察も述べられ、流体計算の負荷を軽減しより大きな粒子で固体部分をモデル化し 粒子数を少なくすることの試みと、その影響についての詳細な検討がなされた。
3 姫路工業大学工学部 飯村健次助手 (連名 京都大学工学部 東谷 公教授) 「DEMのコロイド系への応用」
DEMと流体力学的な手法を組み合わせ、凝集体のコンフォメーションのみから粒子 −流体間相互作用を推算する方法を開発し、粘性媒体流れ場中での凝集体挙動の解析が 紹介された。モデルの基本的な概要とその妥当性が検討された他、流れ場中での凝集体 分散、凝集体の平板への付着機構、平板付着凝集体の飛散機構、気相中での分散、加速 度場及び障害物への衝突による分散など数多くの計算例が示された。
(6) 基調講演(15:50〜16:20)
財団法人高度情報科学技術研究機構 阪口 秀博士「インターパラダイムとしての DEMの役割」
DEMが利用されている各種分野、応用問題、今後期待される新たなDEMの利用 についての問題提起が行われた。また、DEMが潜在的にかかえている共通の問題(計 算時間、パラメータ設定、コーディングなど)の洗い出しが行われた。さらに、これ らの諸問題に対する解決策についての検討が行われ、、DEMに関する系統的な基礎 研究、大規模高速化、標準化、新しい問題への挑戦についてのプロジェクト設立の提 案が行われた。
(7) 全体討論(16:30〜17:00)
司会:京都大学大学院人間・環境学研究科 早川尚男助教授
パネラー:伯野、中瀬、戎崎、恒川、田中、飯村、阪口、吉田
テーマ:DEMの今後の発展にむけて−高速化、標準化、データ共有等
討論会に先立ち、司会の早川氏より、DEMに関する総括と宇宙問題に対するアプロー チ、さらにパラメータ設定に関する具体的な問題例などが示された。その後、
1) DEMの将来性
2) スケーリング則
3) ブレークスルー
4) コミュニティ作り
5) コードの標準化
の問題を中心に会場の参加者とパネラーによる活発な討議が行われた。
以上
2002.10.3